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暴動 [ウィリアム・ウェルマン]

ウィリアム・ウェルマンはやはり、とてつもない監督だ。『Forbidden Hollywood vol. 3』収録の『Heroes for Sale』、『Wild Boys of the Road』を見た率直な感想である。

プレコード時代の映画を集めたこのボックスセットは、プログラムピクチャー的なものばかりを収録しているのだと思い込んで軽い気持ちで見ていたら、強烈なボディブローを鳩尾に喰らった。1930年代前半にハリウッドでこのような映画が撮られたなどとはちょっと信じ難い。もし40年代末に撮られていたら、ウェルマンが赤狩りの標的になっていた可能性すら想像できる。

所謂社会派の映画というのは、大恐慌の時代だけに他にもあったはずだし(たとえばキャプラとか)、それ以前、たとえばグリフィスだってもちろんやっていたわけだが、体制に対する民衆による集団的直接行動、つまり暴動をウェルマンの2本の映画ほど見事に映し出したことがかつてあったのだろうか。

エイゼンシュテインがアメリカを訪問したのは1930年ぐらいだったと思うが、その映画がウェルマンに示唆を与えたということは充分に考えられる。リチャード・バーセルメス主演の『Heroes for Sale』に登場する群衆は、本物の労働者や浮浪者だったらしい。

しかし、『Wild Boys of the Road』が見せる職を求めて鉄道でアメリカを放浪する少年少女たちの運動をエイゼンシュテインが果たして捉えることができただろうか。警察に列車から追い立てられた少年少女に先輩浮浪者が言う、「奴らはせいぜい20人、お前たちは100人。なぜ戦わない?楽勝だろ」。鎖が断ち切られたように暴れまくる集団としての少年少女の運動は、『Blow the Night / 夜をぶっ飛ばせ』の他にその例を記憶しない(曽根中生の場合は、窓ガラスによって閉鎖された空間=学校内での暴動という点で特殊だけど)。

ウェルマンはこの4年後にメロドラマ『スタア誕生』を撮っている。全く底知れない。ボックスセットにはウェルマンに関する2本のドキュメンタリーも収録されていて、彼の仕事に関する理解を少し助けてくれる。しかし、30年代前半の監督作だけでもまだまだ気になるものがある。TCMにおかわりをお願いしたいな。


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