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Short time for Insanity 第1日 [ウィリアム・ウェルマン]

年末年始を休みなく労働に捧げたマリャーノフは、自らへのご褒美としてウィリアム・ウェルマンの500円DVD、現在入手可能な6枚を全て買ったのであった。年代順にタイトルを列挙するなら『つばさ』、『民衆の敵』、『スタア誕生』、『ボージェスト』、『西部の王者』、『戦場』ということになる。このうち近い過去に確かに見た記憶がある『戦場』を除く5本を見た今、彼は寒風の中再びウェルマンに思いめぐらす。

マリャーノフは自身が以前ここで「ウェルマンは地味な監督である」、「ウェルマンの映画にはクライマックスが欠落している」というようなことを書いたことを覚えている。根本的なところで今日その考えが変わったわけではないのだが、しかし彼はもう少し言葉を変えて説明する必要性もまた感じている。なぜなら「地味」だと形容されるような監督に現代の少年・少女が興味をかき立てられるはずもないからである。

だから、今日は逆のテーゼから出発してみよう。ウィリアム・ウェルマンはド派手な監督である、と。マリャーノフは何も詭弁を弄しようとしているわけではない。「ワイルドビル」と渾名されるこの人物の経歴を見ればそれは一目瞭然である。

まずウィリアム・ウェルマンは、高校を放校されている。校長の禿頭の上で臭い玉を破裂させたからである。当時町の不良少年矯正委員を務めていたのは実の母親であったのだが、彼女は自分の息子だけはついに矯正できなかったいう。学校を追い出された後、彼は職を転々とする。気に入る仕事が見つからなかったのだ。そして、折しも勃発した第一次世界大戦を機に彼はフランス外人部隊に入隊、戦闘機乗りとして活躍するのである。

どれほど多くの敵機を撃墜したかは知らないが、ウェルマンは生涯後遺症を残すような大きな怪我を足に受けて帰国する。一時は空軍で教官を務めていたが、友人ダグラス・フェアバンクスの紹介でハリウッドで役者を志すことになる。しかし、役者ほど彼に馴染まない職業もなかった。撮影中後にラオール・ウォルシュの細君となる女優を引っ叩きクビになる。そして、役者から裏方に回り監督業を目指した。

監督として地歩を固めるかたわら、彼は4度の結婚を経験する。とりわけ生涯続くことになる4度目の結婚は、すでに40歳になっていたウェルマンが19歳の女優をかどわかした挙げ句のことである。インタビューの中で彼もまた「犯罪スレスレ」というような言葉で述懐していたような気がマリャーノフにはしている。とにかく、この結婚でウェルマンは19歳の女優に次々と7人の子供を孕ませるという離れ業をやってのけるのであり、戦闘機乗りとしての本領を発揮したのである。もちろん7人の子供を出産する間には19歳だった元女優のドロシーも幾らか年齢を重ねたはずである。

一片の曇りなき人生、とマリャーノフはつぶやく。ピーカンだ。全ての人類が手本とすべき人生であり、偉人伝にして全国の小学生に読んでもらいたいような人生である。マリャーノフは飛行機には極力乗りたくはないが、40歳にして19歳の女優をかどわかすという辺りが特によいと思っている。

もちろんマリャーノフは、ある監督の人生がド派手だからといってその映画が常にド派手なわけではないことは承知している。しかし、この人生はどこかしらウェルマン映画の語り口に通じるものがあるような気もするのである。ウェルマンには『Short time for insanity』なる自伝が存在する(マリャーノフはこの題名を聞いて狂喜した。『Harpo speaks !』に匹敵する!これはいずれ購入しておかなければいけないと彼は思う)のだが、マリャーノフが参考にしたWikiの記事なども監督自身の口によって語られた人生を基にして書かれているせいかもしれない。

さて、ここでウェルマンの映画そのものに話を移行しつつ、『つばさ』がどれほど傑作であるかマリャーノフは少年・少女に訴えたかったのだが、あまりに長い記事は嫌がれるだろうからと、彼は日を改めて書くことにした。
そして、マリャーノフはウェルマンのDVDなどを買うためのお金を手に入れるべく、明日もアルバイト探しに出かけるのだがしかし、彼はウェルマンのようには振る舞わないだろう。
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