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グラントリノ [イーストウッド]

 ここのところ少し忙しくしていたものだから先延ばしにしていたのだけど、先日ようやく『グラントリノ』を見た。
 イーストウッドの作品の中でもとりわけシンプルな、むしろありきたりとすら言いたくなるようなスタイルで撮られているのが、本人が画面に登場し「うー」と唸るだけで、見ているこちらとしては心揺り動かされずにはいられないのはとても不思議だ。お得意のギャグなどもちりばめながら、映画はどこか不条理とも言いたくなるような飛躍をし、いつしか暗い暗い領域に突入してしまう。十分に予測できたはずの結末が、いざ目の前で現実のものとなったとき、嘘だろ、とつぶやき、海岸沿いを駆るグラントリノの光景をあってはならないショットであるかのように宙吊りにしたまま劇場を出た。
 個人的なある最近の出来事に重ね合わせてしまうこともあり、『チェンジリング』のときにのように気安くもう一度見に行く気分にはならないかもしれない。この気分はいましばらくそっとしておきたい。
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